画家を志す若者と画廊を営む和服の女。
吉田基已の新刊
夏の前日をやっとこ読んだ。
久々の新刊で浮かれてたのだけど最寄りの本屋に置いてなくて結局
Amazonでポチったw
新刊と言っても
水の色 銀の月と地続きの外伝のような新作。
登場人物が同じで主役が違う。
もともと
水の色 銀の月が1話ごとに主役が異なるオムニバスなので既読でも未読でも支障はない。
僕は既読なので結果はわかるけど、どうしてそうなるのか結論は知らない。そこが実に楽しみ。
それにしても素敵だ。
歳上で和服で強気で儚い女…。
素敵だ。
気が強い……年上の女に……やさしく叱られたい
と酒に酔いつつ管をまく画家志望。
わかる!わかるぞ!
彼の絵……絵を描くとこに惹かれ炎天下の中を日傘をさして彼を眺める和服の女。
もうね、世は21世紀だと言うのに何この昭和臭さ。
恋は盲目と言うけれど、この2人は危うい感じ。
最近読んだ
溺れる花火のように葛藤が肉欲を増長するようなものでもなく、何が危ういのか、別に不倫でもないし両思いで障害もない。
けれど、彼の彼女の絵への相手の鋭さと、そしてそれが確信にはいたらない幼さと、何かわからない。
それが危うい。
「俺じゃあなたとはつりあわない……」
「あっ……そんなふうに思っていたの?……馬鹿ね そんなにあたしが好きで好きで堪んないのね?」
「なんで……そうなるんだよ! んなこと一言も言ってねーだろ……」
「ふぅん?」
彼にとっては言わない意地、彼女にとって言わせたい意地。
「いいのかよ 晶だって明日も仕事なのに……こんなことしてて 鍵を渡したままでいいのか 毎日来て……求めるかもしれないぜ」
「体だけが目当てなの……」
「違うよ!」
「うぷぷ……ごめ ぶっふ……哲生ってほんとにかわいいね」
「かわいいとか言うな……」
「だって うん 哲生がいやじゃないならね 逢いたい 毎日でも……抱いて そう言わせたいの? 意地の悪い……」
やってることは思春期まんま。
しかしそのやりとりにひたれるのは、思春期の無邪気さではなく仕事と願望を抱いて疲れた現実故。
ばか…下手っぴ
と思いつつ彼を求めて受け入れる彼女がたまりません。
強気で優美、芯があって儚い、男にとって理想とも言える女性像なのに幻想丸出しの気持ち悪さが無い不思議。
彼女(晶)が友人に自慢してるところなんて、ある意味おめでたさがうかがえる。幻想を充たし、でもしっかりと女。
「バイトで忙しいってのは仕送りなんかも貰ってないのかね」
「パンを……」
「パン?」
「パンを……食べるか木炭を消すために使うかで悩むのよ きっと哲生は……」
「それときめくところ?」
馬鹿だねw
水の色 銀の月を読んでるから2人の結果はわかってる。
けど2人の出した結論はわからない。
身体を求めて感情を傷めて、ただただ好き合う2人。
あと1,2年は結論(新刊)が出ないのがもどかしい。
3点リーダ
ところで引用していて気づいたのだけど、本書は漫画なのに吹き出しの3点リーダ(破線)が小説と同じく2文字で統一されている。
……↑この記号。
3点リーダだけの吹き出しは3文字以上なのだけど、ざっと読んだ感じ文字のある吹き出しには2文字だった。
これは講談社の指向なのかアフタヌーンの傾向なのか。
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