昨今
メイドさんが持て囃される時代。「
御主人様」と呼ばれ奉仕されるのも一興ですが、本邦にも素晴らしい文化があります。
それは
女中。
本書は、売れない三文小説家の自宅に、或る事情で住み込みで務める
女中さんと小説家の日常をほんわか描いた漫画です。
女中ですよ、
女中。割烹着ですよ、割烹着。
もうこの
女中さんが可愛いのなんのって!!
以下は本書の作風を善く現している第1話の粗筋です。
基本的に真面目で働きものの女中さんですが、時たま居眠りをします。その寝顔を見て和む三文小説家。釣られてか、自分もいつの間にか眠ってしまった三文小説家。ふと目を覚ますと、そこには女中さんが。三文小説家が眠っている間、ずっと膝枕をしていたのです。「今日は寝て眠りこんじゃって何も出来なかったので…せめてヒザマクラくらい…と思って」
――と、こんな他愛ない話が1話完結で描かれています。
登場人物は三文小説家と
女中さんの二人以外にも――
女中さんに惚れた少年・リュウゾウ
リュウゾウの同級生(幼馴染)のツグミ
三文小説家の教師時代の教え子ミカネ
等等、
ツンデレな幼馴染の
ツグミや、
メイドに扮して恩師に報いようとする
ミカネ、など
女中さん以外にも愛らしい(所謂
萌え)脇役も描かれています。
舞台は昭和年代のようで、粛粛、楚楚とした日本文化が次第に薄れていった時代に、夢や青春が薄れながらも何かを抱いて頑張る三文小説家。
そして、何故かずっと傍にいる
女中さん。西洋的な物質的な豊かさとは異なる、日本らしい他愛ない日常の幸福が、綺麗に描かれています。
その割には
メイド服を着た
女中さんが描かれたりしていますが、現代的な
萌え(もえ)と古式ゆかしき
愛で(めで)の見事な
折衷。
こんな
女中さんが僕も欲しい!! 女中さんは
俺の嫁(?)。
皆さん、本書を読んだら印税生活なんてどうでも良い三文小説家になりたくなります(笑)。
「
御主人様」なんて言われても萌えません。
時代は「
旦那様」です!!(本作では
ダンナさん)
と戯言は置いておいて、トーンなどを多様せず、陰影が線やベタで描かれているので、時代(舞台)の素朴さも善く表れています。
僕(26歳)などの世代には知りえなかった、追われず求めず、ただ日々を過ごす日常。
そこには、多少の苦労と、ちょっとした幸福が折り重なっていたのだ、と知らなかった何かが、現代的な「
萌え」とともに、ちょっぴり垣間見えます。
本書が御気に召しましたら、むんこ著作『
だって愛してる』も御勧めします。そちらは、
女中さんと違い、蹴る殴ると突っ込みが激しい気風の良い女、と売れない作家の夫婦が描かれている4コマですが、こちらも何か懐かしさを感じさせる、笑いあり涙ありの良作です。
あと昭和が舞台の名作と云ったら
京極堂シリーズと
人狼 JIN-ROHかな。これは人を選ぶ指向ですけどA^^;
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