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ぺったんこな胸の、とても厚い胸の内。野村美月,竹岡美穂『“文学少女” と神に臨む作家 下』 このエントリーをはてなブックマークに追加

“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫) 野村美月 竹岡美穂「このライトノベルがすごい!」歴代リスト曰く2007年度3位作品。
しかも唯一の非アニメ化、そして非フィギュア化であるにも関わらずTOP3入り。
そんな素晴らしい作品の完結巻です。

「ご覧のとおりの“文学少女”よ」

今迄、想像し語ってきた文学少女・天野遠子
事件=物語として、あくまで1読者として想像し語ってきた文学少女が、唯一物語の中心、主人公の天野遠子が描かれる作品。
完結巻だけあって、唯一上下2冊での物語。題材となる文学作品と、それをなぞりながら語られるモノローグ。結果は予想出来ても、経過が想像出来ない、実に文学少女らしい完結巻だったと思います。
正直、“文学少女”と月花を孕く水妖(ウンディーネ)から僕が予想した結果とは異なった完結でした。
小説という媒体で小説を主題にすると、男が男を賞賛したり、音楽って素晴らしいと歌ってみたり、自画自賛の、ある種の白々しさが表れてしまうものだけれど、この作品は登場人物の魅力と、解りようがなくて、あくまで想像するしかなくて上っ面なのだ、と一線を引いているので、作品にのめり込める。
それにしても、琴吹かわいいよ琴吹ツンデレというテンプレを踏襲しつつ、女性作家が描く人物らしく、幻想だけに終わらない本音や葛藤が描かれていて、エロゲやラノベで迎合されるキャラとは微妙に異なる愛らしさが溢れている。それにしても甘甘な気はするけれどw
竹田千愛の愛は文字通り痛すぎるw
そして、文学少女,遠子先輩こと天野遠子
探偵役ながら見事に人格があって、てか謎解きよりも天野遠子の言動が気になる、そんな、とても良いヒロインでした。
善意だとかなんだとかの象徴、みたいな落ちかと思ったら、何故妖怪ではなく文学少女なのか、そして天野遠子の薄いぺたんこの胸に秘められた、とても厚い胸の内とは。
「ねぇ、心葉くん……いつか小説を書いてね。心葉くんの書く物語を、わたしに読ませてね」
1巻で言われる、あの言葉が、文学少女の、天野遠子のすべて。
そして、それに対する井上心葉は。
↓ネタバレ反転
もう、泣かない。
ぼくはこれから、道化のように、哀しみを隠して笑おう。
ときに幽霊にように渇望し、ときに愚者として決断し、墜ちた天使のように穢れにまみれても、月と花を胸に抱いて、聖地へ向かう巡礼者のように歩き続けよう。
そうして、神に臨む作家になろう。
今迄に心葉と遠子が歩んできた道をすべて踏まえた、その言葉。
そして、エピローグ・文学少女、最後の2頁が、もう。

本筋である文章とともに、表紙と挿絵で物語を支える竹岡美穂の仕事も素晴らしい。
この竹岡美穂でなければ、あるいは文学少女がここまでの人気は得られなかっただろう。
客寄せパンダではなくて、きちんと小説,文学に対する表現として、とても素晴らしい仕事をしたと思う。
是非、文学少女の画集を発売して欲しい。
それと、1巻の表紙を是非フィギュア化して欲しい。
とにもかくにも、とても良かったラノベ、いや小説、いや文学でありました。

最後にひとつだけ――レモンパイはずるいw

↓布教用 自作MAD


関連リンク
ファミ通文庫◆FB Online◆
"文学少女"シリーズ - Wikipedia
野村美月 - Wikipedia
竹岡美穂 公式サイト nezicaplant
「このライトノベルがすごい!」歴代リスト

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感想(考察) [ 2008/08/30 16:17 ]