日本も金をかければここまで作れるんだ、と同時に金をつんでも作れないものってあるんだな、という事実をはらんだ作品だった。
堤幸彦のあのくどいキャラ作りと演出はずばりはまってたと思う。もともと原作が現実の過去や芸能人などをネタにしてるのもあって、やたら芸能人を出してるのもこの作品に限れば有効で、作品の既知でありながら異質な感じもあらわれていたと思う。
金田一やトリックやケイゾクと変わらない相変わらずだったが、漫画を映画として消化せず漫画のまんま実写にするという点で、ここまでそれを通してぴたっとはまるとは思っていなかった。
ただ漫画を再現してるからこそ、省略や違和感もまた強く感じられた。
例えば2章でオッチョと漫画家が一緒に脱走する画面。オッチョだけが水にもぐり漫画家を置いてけぼりにしたあと、原作ではオッチョと同じく漫画家にも譲れないものがある、と自身を喚起してオッチョについていくのだが、映画ではオッチョが潜ったあとの喚起がなく目的地に達してから「僕にも夢がある」と言うので唐突で意味がわからない。
服装だけで本人に変化が無いので、数ヶ月とか数年単位の時間経過が映像では何ら感じられない。だからキャラの再登場や再会に感動がない。
原作では連載中に各話のひきとなるカットを映像でびしっと再現できてるぶん、そのカットで終わらずにすぐ次の場面にうつるので情緒も何もない。
1章は特に前半が状況説明ばかりなので必要な場面だとわかってるのにえらく退屈だった。90分くらいたったかな、と思ったらまだ30分だった時の絶望感。
もし同じ予算で4クールのドラマやアニメにしたほうがばしっとはまってたんじゃなかろうか?そしたらここまで売れなかっただろうけど。3作いずれも2時間30分あるのに全然足りてないと感じだ。当然なんだけど。
原作も多いに問題あるのに、映画で見ると改めて漫画だから許される演出、漫画の魅力を再発見できた。
空港爆破を止めようとケンヂとユキジがやんや話してるところで万丈目に注目する場面。漫画だと必要最低限の人物とコマ割だから「未知の3人目」に注目するのも自然だが、映画(実写)だと知り合ってる2人が会話中に背を向けて距離がある未知の他人なんぞに注目するはずなんかないし、しかも万丈目が話しかける前にケンヂが「誰だおまえ」っていやそれはないだろw
2章で、カンナと藤木直人の初対面。カンナが逮捕された次のカットで何くわぬ顔で道を歩いてるカンナと藤木直人が再会する。漫画だと[逮捕→小さい風景のコマ→カンナと藤木直人が偶然道で再会]と3から5コマ程度で表現できるが「小さい風景のコマ」が無い映画では逮捕と再会をつなぐ場面もなく言葉だけで「釈放されたから」と言われても、だったら逮捕自体いらないイベントだったじゃん、としか思えない。実際には2人の契機ではあるのだけど、それにしたって。
漫画のコマをうまく再現、実写にしてるが、それだけに漫画にあったものが抜け落ちた劣化にしかなってない点も多かった。
オッチョが教会に飛び込んでカンナを守る場面なんて最高に格好いいと思ったのに、着地した瞬間を足場の拡大とかせずにさらっと流しちゃったから飛び込んできた瞬間をスロウにしてる反動でどうにもしまらない変な時間感覚だった。そのスロウも最初の不意打ちだから格好いいのに何故か1a→2→1bと別のカットをまたいでまた見せられるのでくどい。
国会議事堂の爆破なんて合成まるだしだったけどskyfallとか桁違いの予算映画ですら合成はまだまだ合成まるだしなので、これはしょうがないところか。
1章では巨大ロボット頑張ってるじゃん、と思ったが夜だと色数が少ないからうまくいってたようで、最終章では明るい場所でロボット場面だったので合成っぷりが目立ってしょうがなかった。昔の映画も合成まるだしだったのにそれらしく見えたのは、そもそもの画質にノイズがまじった映像だからこそ、全体的になじんで見えるという点があるんじゃなかろうか?全てがデジタルになると、素材がまんま見えてしまうので、光や色の差がより明確となり合成しやすいけど合成をしあげにくい結果をよく見る。
ケンヂと幼いカンナが食べるラーメンの湯気までCGを使ってたのには笑った。別にそこまでやらなくてもw
端役だった池脇千鶴が相変わらず可愛かった。
レギュラではマルオの石塚英彦が1番よかった。1章の時は正直どうかと思ったが、2章での変化がすげえはまってて笑ってしまった。
漫画と実写で最も近く完成されてたのは春波夫(古田新太)じゃないか。あの歌といいイベントのうさんくささといい。
ユキジは常磐貴子が奇麗なんで全然ユキジに見えなかったw
原作からして段々と酷くなってるのは知ってたから整合性とかは求めていなかったけど、日本映画も本気だせばここまではできる、本気だしてもここらが限界、という感じ。
映像面ではよくできていたけど、説明しまくった挙げ句に説明不測、凄く長いのに尺不測、変なことしないでひたすら原作を尊重して撮ったら原作を読めばいいじゃん、っていう感じの仕上がり。
個人的には楽しめた。もともと悪評にひかれて見始めたので、邦画に偏見を持って全然見ないのだけど久しぶりに見た新鮮さもあってか見て良かった。