比較したのは異なるCDタイトル3枚。当然ながら
リッピングは同じ機材と設定で3曲とも同一。
ただし動画はそれぞれ60fpsで最も近い状態を視覚であわせたので1/60秒程度でずれているから学術的な証拠能力はなく、あくまで単純比較というもの(
Final Cut Pro Xは120fpsに対応していない!)。
動画で再生している音源はハチポチ(理由は後述)。ただし記事および動画の目的は音声のデータを可視化なので、権利者に怒られないように
モノラルかつラジオEQしてる。
分析内容の表示に利用したのは
apple Logic Proのプラグイン
MultiMeter。
ニコニコに予備投稿坂本真綾「約束はいらない」マスタリング比較
動画の画面左は音源の音域周波数。左側が低音で右側が高音となる。CD別の色わけは以下
[CD] | [マスタリングエンジニア] |
ハチポチ | Scott Hull |
Everywhere | 川崎洋 |
シングル | 記述が無く不明 |
※重複してる箇所は白い
動画の画面右の表示は2本1組の音量表示で、左から
シングル、
ハチポチ、
Everywhere。
※濃い青の長いのが
Peak、薄い青の短いのが
RMS
発売順は古いほうから
シングル→
ハチポチ→
Everywhere。
音量と音圧 PeakとRMS
Peak(音量)は
ハチポチが大きくて、
RMS(音圧)は
Everywhereが1番だが、3曲の中で
ハチポチだけが頭1つ抜けている感じだった。
シングルは1番古いのもあって音量や音圧が(比較すると)物足りないし気持ちこもって聞こえる。
Everywhereは
シングルと同じ感じで音量だけをあげたという感じ。
面白いのは、
シングルのほうが音量(
Peak)が大きいのに音圧(
RMS)は
Everywhereのほうが高いから後者のほうが大きく聞こえる。
一般に音量というと
Peakであり
RMSは音響の勉強を知らないとなじみがない概念だが、極論を言うと人が音を大きいと感じるのは音量(
Peak)ではなく音圧(
RMS)値なのだ。
厳密には違うし、最近では音楽に限らず映像作品も同じデジタルデータとして扱えるようになり新しい基準値
Loudnessというのも提唱されているが業界の現場にしか知られておらず一般的とは言いがたい。
圧倒的なハチポチ
ハチポチが抜きん出ていた。
先述の通り
Everywhereは
シングル準拠のリマスタリングなので、しかも
シングルより
Peakが小さく
RMSが大きい、つまりコンプで潰してしまってるので
ハチポチの後に聞くと酷い。
Everywhereの
Peakが
-0.4dBFSなのはおそらく別の収録曲の
Peakにあわせた結果(そもそもマスタリングがそういう調整作業)なので、だからこそ音源が同じでもCDが違うとここまで違うよ、という例に最適だった。ただし単体で聞いて汚いと感じるかというと全然そんな事はない。スピーカで聞いたら気持ち音量が違うかもしれない、と感じられる程度で差異なんて無いと言っていい。ヘッドフォンで聞くと
Everywhereのシンバルロールが汚く聞こえるが、あくまでこういう比較実験、粗探しで初めて気づく程度。こういった可視情報は思い込み(偏見)を誘発するので、自分は多分
単盲検法だったら
シングルと
Everywhereの区別がつかないと思う。
その
Everywhere(シングル)2曲に比べて、
ハチポチだけは明らかに違った。
抽象的だが
奇麗に聞こえる。周波数を見ればわかるが、
ハチポチが1番広く大きい。
RMSは
Everywhereのほうが上なのに
ハチポチのほうが大きく聞こえるし、しかも聞こえ方が自然で奇麗。スピーカによっては奇麗なぶん弱く(小さく)聞こえるかもしれないが、
RMSが特別小さいというわけでもないので、
Peakが
-0dBFSかつ聴感覚で奇麗に聞こえる数値と感覚の両方の面で、
今回の「約束はいらない」に限ればハチポチを買うべき。
ただし、
アルバム everywhere収録の「坂本真綾 - 奇跡の海」の再生速度についてにもある通り
ハチポチの
奇跡の海はシングル版オリジナルと異なり容量にあわせて加速してあるので、純粋に
ハチポチ万歳とは言えない。今回の
約束はいらないは尺同じだった。
マスタリングの勉強のために同一曲の異なるCD比較実験をやって遊んでみたが、結構違いがわかるものだし面白かった。
追記
グレープフルーツと
スペース バイオチャージと
天空のエスカフローネが無いじゃないかって? HA-HA-HA 忘れてただけだよw
ただTVサイズは避けたのと、時代が離れていたほうが機材も人材も違うだろうから違いがわかりやすいと思ったので。気が向いたらTVサイズを除く全比較もするかもしれんが、多分しないなw