賛否両論の映画化
『魍魎の匣』を観覧しました。
京極夏彦の小説
魍魎の匣を原作とした今作。
あちらこちらで言われていますが、かなりの改作です。
しかし、原作信者の僕ですが、今作は敢えて肯定したい。
慥かに、
原作で重要だった要素はかなり省略されています。
あの小説の扱いがほとんど無かったり、京極の薀蓄(長広舌)は当然省かれ、人間関係も変更、シリアスなシーンの中でお笑いネタを展開、
憑物落としのシーンが地味でアレ。
それでも、
原作の輻輳した世界観を映像の娯楽作品としてはよく纏めたと思いますし、原作の魅力(世界観)もある程度は垣間見られたとも思います。
先ずは賛否両論の配役ですが、僕は割と肯定的です、一部を除きw
良かったのは──
京極堂(中禅寺秋彦) | 堤真一 |
関口巽 | 椎名桔平 |
鳥口守彦 | マギー |
中禅寺敦子 | 田中麗奈 |
久保竣公 | 宮藤官九郎 |
美馬坂幸四郎 | 柄本明 |
・堤真一は
前作から変わらないので違和感はなく、京極の小憎たらしい感じもよく顕れていたと思いますw 襷掛けに尻端折りの姿が格好よかった。
これで薀蓄が作品上で展開されていたら文句なかったのに…。
・実は今回の配役で一番嵌っていて驚いたのは椎名桔平の関口巽でした。鬱鬱した感じは映画自体が省いているので今いちですが、関口独特の間抜けっぷりと云うか、しどろもどろと云うか、京極堂や榎さんに突っ込まれる駄目っぷりが再現されていたと思います。鳥口(マギー)とのやりとりなんて御見事。
・田中麗奈は
前作から良かった。最近、今更ながら田中麗奈良いなぁ、なんて思いはじめました。
・柄本明は流石です。美馬坂の浮世離れした所作、これぞ藝と云う感じでした。
そして美術。
前作で易っぽさが露呈された衣装と美術が素晴らしい。
前作の古本屋『京極堂』の建物なんて妙に綺麗で全然を昭和を感じる汚れもなく、如何にも作りました、と云う感じだったのに、今作は建築物
京極堂も、そこに陳列されている
古本もしっかりと古い汚れが感じられ世界観を見事に構築していました。箱館は
仮面ライダーZOみたいだったけどw
そして衣装(衣裳)。
前作は
憑物落としは単なる着流しで、晴明桔梗も見られず、何より
黒衣じゃないw
それが今作では見事に
黒衣の男。背縫いの頂点、衿元には白い晴明桔梗が。
闇の黒地に星型が浮んだ。晴明桔梗だ。墨で染めたような真っ黒い着流し。薄手の黒い羽織には矢張り晴明桔梗が染め抜いてある。手には手甲。黒足袋に黒下駄。鼻緒だけが赤い。──姑獲鳥の夏
まさしく京極堂でした。原作の設定では夏でしたが、映画では冬のようで、登場人物は皆コートなどの上着を着ていましたが、それはそれで意匠として面白く、おかげで
角袖コートが欲しくなつてしまつたw
思わずスタッフロールで衣装の名をチェックしてしまいました。
宮本まさ江と云う女性らしいですが、ブログや書籍の類はありませんでした、残念。
そして音楽。DVDのメニュウ画面に主題曲である、その名も『魍魎の匣』が流れるのですが、初見で泣かされました。凄い。映像に欠けていた原作の寂然を見事に表現しています。
サントラ買っちゃいましたもん。
僕は同作の漫画が素晴らしい出来だったのでMADを作ってしまったのですが、
その時は映画を未見だったので、別の曲を利用しました。しかし、今更ながら映画を観ておけば、と少し後悔しました。それ程に素晴らしい音楽。
本筋や映画に欠けていた箇所は方々で語られているので、余り触れられていない要素(裏方)を少し記してみました。
原作とは慥かに指向が異なりますが、これはこれで有りだと原作信者ながら思いました。
気合を入れればちゃんと映像化で面白くなるのだな。尺の問題だけ解決すれば改作といえど
るろうに剣心(追憶編)みたいな神作になるのではないか、と京極堂の映像化の可能性も感じました。
同じキャストとスタッフで是非連続モノにしてくれ。次作の
狂骨の夢の映画化なんてしなくて良いから(そんな情報ないけど;;)。
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