アメコミ原作の映画が抱える問題
アメコミは、と語れる程には詳しくないのですが、それでもX-MEN,BATMAN,WATCHMENなどフルカラーで値が張りつつも物語とキャラクタに惹かれて少なからず有名所は読んでます。
ヒーローモノの単純な骨子がありながら、例えば
ミュータントと人間の共存などアメリカ的な差別や権力と言った要素がちりばめられ、「悪は滅びたHA-HA-HA」みたいな作品とは限りません。娯楽作品である以上、時代や社会と言った要素が見え隠れし表現されていて、中中に一筋縄には行かないものもあります。
しかし、正直なところ先に挙げた
X-MEN(
エックスメン)の映画や(一部の)
BATMAN(
バットマン)など、キャラクタの人外性を映像的に誇張する反面、人外性を抱えるが故の問題(
作品の題材)がどうにもすっぽり抜け落ちている、というのが目立ちます(
原作付の宿命ですが)。
だからこそ
ダークナイトはあれほど評価され、僕はまだ観ていませんが
ウォッチメンも賛否両論ながらあれほどの評価を受けています。
解り難い脇役
僕は本作の原作は未読ですが、設定(概要)は知っています。知らなくてもある程度の説明紹介はこういう映画にはよくあることなのですが、今回この作品を観覧して、正直なところ人格や関係の深浅がいまいちわかりませんでした。
アメコミらしく印象に残る脇役が多く、それぞれが主人公
トニー・スタークを中心にあっちゃこっちゃから突っついたり離れたりするのですが、何と云うか、そのキャラクタの関係が断金なのか敵側なのか解り難い。
こういう作品の場合
敵は誰か解り易いのが1番で、それに誰とどのように対抗していくのかがアメコミ的なおやくそくであり魅力だと思うのですが、ヒロインの
グウィネス・パルトロー(
Gwyneth Paltrow)以外には、主人公トニー・スタークの命を救う人物や、またアイアンマンとして目覚めた後の軍関係者など、粗筋は単純なのに、最初主人公はわかるけど彼は「なんでここにいるの?」とか師匠みたいな存在かと思ったらただの噛ませだったとか、第一印象で「これはこういう役」ってのがその人物が出れば出るほど薄まっていく感じがしました。
敵ははっきりとわかるのですが、味方が味方らしい関係性(活躍)をあまりはっきり見せずアイアンマンが飛び回るので、結局アイアンマンの孤独さもヒーロー的な際立ちも、どうも、うぅん。
主演の男女
主演は
ロバート・ダウニー・Jr(
Robert Downey,Jr.)。僕は
Ally McBeal(
アリーMy Love)の
ダニーですっかり惚れ込んで、それ以来名前を見かけると反応してしまうのですが、まさかあのアイアンマンの主演とは正直意外でした。
今回この映画を観た理由の半分は彼が主演だからです。
原作のキャラ性をよく知らないのであれですが、彼独特の剽軽さと表情など、この軽さがはたしてどうなのか判断が難しいですが、個性としては抜群だったと思います。
彼はなんていうか、あの首の回し方が独特な気がします。対象AからBへ顔を向ける、あの具合が非常に個性的で舞台演劇や昔の無声映画みたいな芝居臭さがあって、それが他の人物との立場やキャラ性を際立たせてる、気がします。
ヒロインの
グウィネス・パルトロー(
Gwyneth Paltrow)ですが、ごめんなさい、今迄あまり彼女を好きではありませんでしたが、今回ヒロインとしてばっちり惚れてしまいました。
彼女は彼の部下であり、彼の女性に対する軽さやマイナス要素も知りつつ、仕事に対する真面目さや、また親しい人物への姿勢、彼のプラマイ両方を知る人物として、実に朗らかで軽妙にヒロインらしい魅力に溢れてました。
- HAPPY
- It's your birthday?
- PEPPER
- Yeah, isn't that strange? It's the same day as last year.
彼女の誕生日を忘れていた彼に対して
「不思議でしょ?去年と同じ日に誕生日なんて」と諧謔に富んだ言葉など、如何にもアメコミ脇役らしい言動と、それをすらすらっと言ってみせる彼女の表情、そしてこれは演出もあるのですが、女性に軽い主人公という設定を最初に見せておいて、互いの想いを軽く見せておきながら結局2人は
寝ないのです。あの
スパイダーマンですらキスしたと言うのに、今作ではキスシーンすらありません(それらを匂わせる演出はある)。
これらがアイアンマンとして目覚めたトニーの姿勢と、仕事と彼とヒーローに対する彼女のヒロイン性が、全体的な作品の(狙った)軽さの中で妙に印象深いことでした。
「それは愛」みたいなキャッチコピー的な諄さはなく、それでいて作品に必要な男女がいる。
アメコミ映画として1番わきまえつつポイントを押さえた男女なんじゃないかと思いました。
ヒーローの縦横無尽
ヒーローモノとして肝なのは何と言ってもヒーローの活躍場面。これは良かった。
拉致された危機をパワードスーツで蹴散らし、他方で危機を脱した後にくる落ち。この辺は
スパイダーマンでも力に目覚めて飛び回って…という演出がありましたし、先日観た
WALL・E(
ウォーリー)のEVEでもありましたが、やっぱああいうのはあっちの御約束なんですかね。
パワードスーツを完成させ、いざ初陣。これは圧倒的な力を見せて悪党を退治する
これぞヒーローという感じで、VFXを駆使したアメコミ映画としてきっちり見せてくれました。
ただ、所謂
ボス戦は、うぅん。
アイアンマンの強さを見せ、そして次にアイアンマンに触発され登場するボス敵。この見せ場が正直短い(地味)。
アイアンマンの目覚めと活躍に尺を多く割いたせいなのか、ボスが登場してからの戦闘場面にいまいちメリハリが無いというか、映像として動きはあっても、両者の優劣があまり出てなかったというか、極端な話、ドラゴンボールみたいな
ドカーン!!みたいな派手さはなく、それでいて両者が鬩ぎあうわけでもなく、伏線かと思ってた
とどめも
とどめじゃなかく戦いは継続していったり、よく動くキャラに対して決めてに欠ける構成、というのが率直なところ。
落ちはこれでいいのか?
あと
あの落ちはありなのか?
あれヒーローモノとしてありなのか?
脇役が次回作を匂わせる伏線を張っておきながら主人公があれじゃどうなんだろう。
単発としては面白く実際に笑ったのだけど、あれ原作設定とかどうなのか非常に気になるところ。
最近
300(
スリーハンドレッド)や
WALL・E(
ウォーリー)でもエンドロールにも演出を絡ませてサービス精神あふれる作品を連続して観ましたが、アイアンマンも落ちからエンドロールの流れは格好よかった。
総評
主演2人はともすれば浮きそうな軽さが本作ではばっちりと噛み合っていて良かった。VFXも流石今の時代にやったアメコミ映画という感じ。
ただ脇役の弱さと、
意味は無いけどとにかく派手ってわけでもなく、それでいて
地味だけど根拠ありってわけでもなく、全体的な構成がいいのに細かい具体的なところ1つ1つで綻んでた印象。
あとスターウォーズでもあるけど
ワイプトランジションは妙な古くささというか諄さがあって僕は好きじゃない。
如何にもな演出がマイナスだったかなあ、とかなんかあんまりのめり込めなかった。
尺も2時間と長いし、1回は観る価値あり。けど1回でいいや、という典型的な大衆娯楽作品。
グウィネス・パルトロー(
Gwyneth Paltrow)とのラヴコメとドレスで見える背中だけはガチ。
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