またどこかで会おう。え？終わり？

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youtube 'Milk' Trailer

作品は実に冷静で彼を神格化せず、民衆を印象操作する政治家としてのしたたかさ、行きずりを楽しむ恋愛への浅ましさ、あくまで人物への考察を表現した作品で何もかもが素晴らしい人、というハリウッド映画らしからぬ出来。
当然ながら、異性愛者と同じく同性愛者が皆善人とは限らない。
被差別からサンフランシスコに住みだした同性愛者だけど、上半身裸で歩き回ったり、抑圧への反発ゆえに、同性愛とか関係なく社会的に軽卒な性行動は問題だ、と映していて驚いた。結局のところ各々浅ましい人間なのだ、と平等に辛辣に描いてる。

実際に報道された映像を交えていたので、映像資料にはなっても映画としては微妙な点も多々あった。
古くささを出すために映像にノイズを足したりしてたけど、映画として矛盾するが作り物を観てると自覚させられて、役者の会話など抽象的に良かったところまで映像処理のせいで嘘くさくなってしまってたのが残念。
カムアウトを促す場面でのノイズは特に酷かった。今時照明とカメラをちゃんとしたらあんな風にはならないと思うのだけどなあ。暗い部屋で1人悩む場面ではしっかりと綺麗だったし。

演説する時のあの肩と肘ががっしりしつつやわらかい手首の動きなんてまさしくゲイだったSean Pennすげえw
俺の偏見もあるけどあれはまさしくゲイだw

音楽は全く印象に残らない、徹底してBGMだったけど、だからこそ良い仕事だった。
僕個人はDanny Elfmanの派手な仕事が好きだけど、こういうGood will hunting路線もいけるね。
Endingも歌じゃなく作品を通したインストだったのも英断。

これまで、映画と言うにはあまりに地味、そんなに動かないカットが多かったのに、ラストで頑張って映画にした、って感じの演出が雪崩れ込んできて、僕はうんざりした。
撃たれる場面の背景が合成過ぎて萎えた。Watchmenを観た時も書いたけど背景はやりすぎると作品内の世界が途端に薄っぺらい嘘になってしまうから、あまり合成とか明るくとかしないほうが良いと思うのだけど。
ただ、これは僕が日本人だからかもしれない。欧米人の被写界深度が日本人の僕には合わなかっただけなのかも。
それにしても、Sean Pennが良かっただけに背景やスローなど過剰演出が残念。

彼が亡くなり、主に同性愛者がだけど、大勢の人が列をなし彼の死を悼んでいたのは、事実としては素晴らしく悲しく言いしれないけれど、映画的には、それなんてPay It Forward?で笑ってしまった。
事実と幻想の折り合いがつかなかった感じ。

それにしても、実際に暗殺に備えて録音されたテープがあり、そのテープに録音するところから作品が始まるのだけど、彼を演じるSean Pennのあの優男っぷりには本当にたまげた。体はしっかりと男なのに、関節の動きがどこか女性的で、まさしく同性愛者そのもの。
僕はMystic Riverが大好きなのだけど、あのいかつく鋭い彼を観て、そして今度はなよった柔らかい彼を観て、表現とは何たるか役者でなくとも思い知る。
友人の死を悲しむ場面は物足りないと思ったけどw

僕は男性で日本人で異性愛者。差別を受けにくい環境と状態なので、大概の悲哀を知らない。
けれど、日本でも同性愛者の結婚は認めるべきだし、また男女の結婚に関する法律も見直しが必要だと思ってる。
いずれ差別は間違いで、またする者もされる者も等しく浅ましかったりもする。
作中の引用ではないけど、つまりその通りだからこそ問題なのだ、と。
君は病気ではない、間違ってもいない。

DVD冒頭でSunshine Cleaningという映画の宣伝やってた。これ面白そう。

関連記事

• よくできた映像、継ぎ接ぎの映画【ウォッチメン】
• 欧米人の抽象的な被写界深度

関連リンク

• 映画『ミルク』オフィシャルサイト
• ハーヴェイ・ミルク - Wikipedia

■オスカー女優 マーリー・マトリン

マーリー・マトリンと言えば、やはり愛は静けさの中にが有名でしょうか。正直映画に関してはこれ以外たいした作品には出演していませんA^^;
マーリー・マトリンはこの作品で聾唖者のヒロインを演じて、女優として史上最年少の21歳でアカデミー主演女優賞を受賞しました。

【受賞当時のスピーチ映像】

YouTube - Marlee Matlin winning Best Actress

この映像を見ると、彼女は手話でスピーチをしています。
それも当然で、彼女自身が聾唖者なのです。

■マーリー・マトリンとの出会い

僕がマーリー・マトリンを知ったのは当然愛は静けさの中に…ではありません。
僕が知ったのはザ・ホワイトハウス(THE WEST WING)という政治ドラマです。
群像劇である本作の主人公の1人、次席補佐官ジョシュ・ライマンに抗議するために駆け寄るマーリー・マトリン演じるジョーイ・ルーカス。
本編の面白さもあり、この登場シーンにて惚れ込んでしまいました。

■The West Wing - Josh Lyman Meets Joey Lucas

先日飲み過ぎてふらふらのジョシュに対していきなり詰め寄るジョーイ。しかし、捲し立てる男性の横で必死に身振り手振りを見せる女性と、そして名前から男性だと思っていたジョシュの不意打ちをくらった顔、第一印象が強烈でした。

■聾唖、手話を扱った作品

日本における聾唖者(手話)を扱ったドラマと言えば酒井法子主演の
星の金貨でしょう。本筋は結構トンデモですけど、主題歌碧いうさぎの振り付け手話というのでも有名ですし、この曲は今聴いてもいいですね。
あともう1つ、オレンジデイズ。これは不断あまり日本のドラマを見ない僕がはまった数少ない作品の1つです。中途失聴者であるヒロインの青春ドラマなのですが、出演者が日常会話のほとんどのシーンに手話を用いるなど作品としての取り組みも真面目で好きなドラマでした。

■娯楽作品としての聾唖者

そして、今回のザ・ホワイトハウス(THE WEST WING)の話。
僕は元元この作品が好きだったのですが、この作品の素晴らしさを見せつけられた、と思った話の1つが、このマーリー・マトリンがジョーイ・ルーカス役でゲスト出演する安息日(Take This Sabbath Day)。
この話は死刑制度の問題を扱った話で、説教と懺悔も印象深いのですが、先述した日本のドラマと決定的に違うところが、聾唖であることが作品において問題視されない。
これに尽きると思います。
マーリー・マトリン主演の愛は静けさの中にはヒロインの境遇を描いているために登場人物も観客も聾唖に注目します。
しかし、本作は最初から通訳がいて、観客も登場人物であるジョシュと一緒に最初驚きますが、そんなのを無視して肝心の話をただ捲し立てるジョーイに呑まれ、手話が非日常の装飾ではなく、単なる会話として馴染んでいます。
聾唖を扱った作品では、サスペンスやミステリだと聴こえないがゆえのトリックや巻き込まれ展開があり、またドラマだと先に述べた星の金貨やオレンジデイズなど境遇に対する同情的な要素が強く表れますが、この作品にはそれらが一切無く、僕は最初題材でもないのに娯楽作品としてどうして聾唖者であるマーリー・マトリンが出演したのか考えてしまい、そう言った差別的な認識に反して凄くいいキャラをしていて気になってしまい、当時知らない女優だったのですぐ調べたところ、なんとオスカー女優だと知ったのです。

■出演作品

このドラマを契機にマーリー・マトリンを知り代表作である愛は静けさの中にを観覧し、そしてマーリー・マトリンという女優にすっかり惚れてしまいました。
とは言っても、映画で良かったのはこれくらいで、後は正直B級のなんだかなあ、という作品ばかり。ドラマのゲスト出演では、ER、スピンシティ、など好きで見ていながら当時は全く認識していなかった作品もありショックを受けたりもしました。
最近だと身内と一緒に飯を喰いながら何気なく観ていたCSIの画面にいきなり映って1人吹き出して怒られたりもしました。

■マーリー・マトリンの魅力

作品としての扱いを語りましたが、マーリー・マトリン個人の魅力を示す話があります。
ザ・ホワイトハウス(THE WEST WING)のファンブック【ザ・ホワイトハウス オフィシャル・ガイドブック】によると、ドラマの脚本、製作総指揮アーロン・ソーキン(Aaron Sorkin)が何か印象深く抜けた面白いキャラクタを考え悩んでいたところ、「演技力抜群で美人な耳の聴こえないオスカー女優なら1人知ってるわ。もし良かったら紹介してあげる」というメールをマーリー・マトリン自身がアーロン・ソーキンに冗談まじりに送ったというのです。
いや、もうこれは惚れるでしょ？
残念ながら旦那がいますがw

■終わりに

残念ながらザ・ホワイトハウス(THE WEST WING)以外でもうたまらんと言えるほどの出演作品がなく、マーリー・マトリンのはっちゃけた性格や、またオスカー女優としての仕事などを見る機会は余りありませんが、【オスカー女優マーリー・マトリン、ハリウッドの殿堂入り】を知って、この人はゲストでも脇役でもいいから制作者も観客も構えずに見られる土台がある今こそもっと色色なところで観たいな、なんて思いました。
最初の論旨ジョーイ・ルーカスの魅力とは離れた内容になってしまいましたが気にしないことにしますw

■蛇足

この記事を書くにあたり手話関して軽く調べたところ、日本で最初の聾学校に関する情報を入手したので、メモとして。

1862年、江戸幕府に派遣された第一次遣欧使節一行はヨーロッパの聾学校や盲学校を視察していた。日本で最初の聾学校は、古河太四郎が1878年に設立した京都盲唖院である。ここに31名の聾唖生徒が入学し、日本の手話が誕生した。

関連記事
◆【THE WEST WING】Episode List
◆ザ・ホワイトハウス(THE WEST WING) 5th シーズン コレクターズ・ボックスを予約した。
◆第690回「好きなドラマは何ですか？」
◆[これは本当の物語だ]Charlie Wilson's War(チャーリー・ウィルソンズ・ウォー)[でも、最後でしくじってしまった]
◆日本語Wikiにアーロン・ソーキンの記事が無くて泣いた

関連リンク
◆マーリー・マトリン - Wikipedia
◆オスカー女優マーリー・マトリン、ハリウッドの殿堂入り　写真14枚　国際ニュース : AFPBB News
◆アカデミー賞女優マーリー・マトリンが記念の手形 - MSN産経ニュース