以前に全3巻で発売されていた
二宮ひかるの代表作が未収録だった
『口には出せない』や書き下ろし話も含めた
完全版で再発売されました。僕個人は
ハネムーンサラダよりも本作が好き。
めぞん一刻、
電影少女、
とらドラに並ぶ私的ラヴコメ四天王なのですが、如何せん知名度がorz
上記のラヴコメ3作品と異なるのは、
セックスを描いているところ。
エロいんだけど、
エロいだけじゃない
セックス。
求める男、応える女。
けれど、どこか噛み合わない二人。だけど、一緒に居る二人。
帯には
恋愛欲を刺激する二宮ひかるの代表作と記してあったが、まさにその通りだと思う。執着する
愛も求める
恋も自分以外に対する
慾なんだよね。本書を読むと、身体を求め、感情を求め、相手を求めたくなる。
二宮ひかるは女性作家だけれど、男性視点の「女ワカンネ」をよく描けてると思う。なんで言わないの? なんで引くの? ヒロインの
藤沢麻衣子よりも年上なヒーロー
田崎敦の振る舞いが共感出来るし可愛らしいw
そして、女性作家らしい女性としての逡巡や願望また描かれています。だから凄い。
ヒーロー,ヒロインと書いたけれど、全然たいしたことない二人なんだよな、主人公の癖に。
ただの男女。感情移入とは違う、二人を見て思い考える、隣の芝生と反面教師。だから笑えるし痛々しい。
田崎「そんなに簡単に本気にならないでくれよな」
麻衣子「──え?」
田崎「いやホラ…簡単に『好き』って…」
麻衣子「──ああ あれは私の癖なんです」
田崎「そう だからクセ…はい?」
麻衣子「だからァ…癖なんです。感ジテルときの…」
そう言って彼女は実に屈託なく笑った。
麻衣子「それじゃ おやすみなさい」
僕は男だから解りませんが、こういう女ってどうなんでしょ。
ずるいよな。挙句に──
田崎「どうする? メシでも食ってく? まだ大丈夫な店あるよ?」
麻衣子「あ…いいえ、けっこうです。私……よく知らないひととゴハン食べるの苦手なんです」
田崎「あ…あ…そう?」
麻衣子「それじゃ! おやすみなさい」
思わず怒鳴りだしたくなる。てめえはっっ!! メシも食えんような相手とセックスできるって言うんかい!!
凄いね。これが
セックスを仕事にしている女性なら解るんだけど、同僚がこれを言うのか。これを言われるのかorz
それでも接する二人。きちんと身体の関係は続き、徐々に感情も。田崎も拒まれないのではなく、受け入れられているのを感じます。
誰だってそういつも優しくされているわけじゃない。メンエキなんか簡単にはできっこない。
そう。嫌われるなら怒ったり悲しんだり出来るけど、優しくされたら受けてしまう。拒めないんだよね。
1巻終わりの話が本作を象徴していると思います。
エロい意味でも
情緒の面でも。
麻衣子「田崎さん…オナニーってします? 私はしますよ。田崎さんがほかのひととしているところを想像して──めちゃくちゃに感じて、とても悲しい」
これを言う女ってどうなんだ? 言われる男ってどうなんだ?
題名の
NAIVE(ナイーヴ)は善く
繊細と云う意味で遣われますが、
鈍感,朴訥,未熟と云うのがが本意です。
繊細なのではなく、
鈍感で朴訥で未熟な二人。
キュンとはしないし、落ちもない二人の物語。
ただの男女、だからこその物語。
もっと読者人口が増えても良いと思う傑作です。最後に帯の煽り文を。
読むと、したくなる。男だけでなく、女もね。
そんな作品。
さて、次は
シギサワカヤの
九月病でも再読するかな。これも馬鹿な男女なのよね。
関連リンク
・
二宮ひかるのファンサイト MASHROOM・
紙屋研究所の案内図 二宮ひかる『ナイーヴ』・
ある二宮ひかるファンの日記